昇華転写とは

昇華転写に求めるもの・加工品

発色性

濃い色、鮮やかさなど、昇華転写の色域は顔料系よりも広く、故にデザインのレベルが高くなるほど、昇華転写を選択する傾向があります。

 

しかしいくら良い機械を使用しても、出力結果はプロファイルの作り込みによって左右されます。基本、プリンターメーカーが用意したプロファイルを使うのですが、プリンターメーカーと言えど、あくまで作るのは人、能力差が生まれます。

 

ライト系を積んだ6色機より、4色機のほうが粒状間も少なく、鮮やかな場合もあります。よくあるケースで、540dpiモードより720dpiモードの方が色も濃くきれいだと考えられている方が多いのですが、実際540dpiでプロファイルを触りこんで出力しても十分な発色に仕上げることは可能です。

 

グラデーションリップソフトの性能、プリンターとのマッチングで滑らかなものに改良していくことが可能です。

エッジの鮮明さ

エッジの立ちはプリンター側でいえば、メンテナンス調整が行われていれば、転写紙のコックリングとにじみが影響するかどうかです。紙の選択に関係します。

 

問題は転写機です。昇華転写では生地と転写紙を熱源に加圧し、昇華させる訳ですが、加圧力が強いほどガス化した染料が横に移動し辛くエッジが立ちやすく、尚且つ染料の定着も表面に多く留まります。平面の機械で高圧をかけたほうが濃く、シャープに仕上がるのはこのためです。

 

押しつぶした転写はロールタイプの転写機では再現できません。生地風合いとは反比例します。

染色深さ

幟で言えば裏抜けという判断基準です。のぼりの場合裏側からも視認しますから、表と同じくらいの濃度を求めます。

アパレル系で言えば特にニット製品に染色深さの判断をしていきます。

 

簡単に言えばニットは編み込みによって作られ糸が幾重にも重なっています。

見た目がきれいでも、延ばしたり折り畳んだりした時に、深い部分にある糸が染まっていないと白い部分が見えてしまいます。ミシンをかけた後、針を刺した穴が白く見えるのも染色深さの調節で軽減します。

昇華のガスは生地の厚みに対して表から裏に時間とともに移行していきます。

染料の量と、プレスにおける温度と時間、加圧力によりバランスをとります。

生地風合い

エッジで述べたようにプレスで高圧力をかけた場合、ニットなどの編組織は昇華の条件である温度帯により、ポリエステルのプリーツ加工と同じようなつぶれ方をします。もともとの生地の性能である保温性や吸汗性能を、大きく損ないます。よってプレス加工時に求める風合いに応じた条件を探り出します。

堅牢度等

繊維製品でなくとも、洗濯、耐汗、耐候性、摩擦、移染、等々、いろいろな試験があります。

 

旗幕では主に耐候性と防炎が取り上げられます。屋外掲示で雨降りで泣き流れが出たり、防炎認定生地なのにプリント後で試験NGだったり。原因の特定が難しいところです。

 

反物の仕上げ剤やインク、昇華条件、様々な原因があり、資機材全メーカーが絡んでくることもあります。

 

アパレルでは多くの染色性能の弱いところを注意書きのタグでかわすこともできますが、最も嫌うのに移染があげられます。

 

これは転写後に素材を重ねて保管した場合などに、時間の経過で転写した部分が相手の白地に染料の移行を起こす問題です。

 

原因のほとんどがインクの吐出量とプレス条件のマッチングがなされていないことです。洗濯堅牢度も然りです。

 

現状大手の受け入れ先でさえ、性能の基準を策定しきれずにいます。初期に案内した染色品で起こしているトラブルを、後々まで引きずっている加工先も多く見受けられます。

 

特にインクジェット昇華捺染で厳しい試験

「JIS L 0854昇華に対する染色堅ろう度試験方法」

複合試験片をステンレス板に挟み、汗試験機に取付けて約12.5kPa(6cm×6cmの試験片の場合約45N)の荷重をかけます。汗試験機を120℃±2℃の乾燥機で 80分間処理した後、汗試験機から複合試験片を取り離し、試験片の変退色と添付白布の汚染の程度をそれぞれ判定します。